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家庭医とは
家庭医とは
当クリニックの医師は「家庭医」という、まだあまりなじみのない専門資格を持っています。
ここでは家庭医に関して話をさせていただきます。
性別、年齢、臓器に関係なく幅広く診る医師
一般的な病院やクリニックには「内科」「小児科」などの診療科が標榜されています。家庭医はこれらの診療科にとらわれず、幅広く診察することができます。
赤ちゃんからお年寄りまで、様々な年代のご家族の問題、例えば、子供が熱を出した、鼻血が出た、こけて切り傷が出来た、頭をぶつけた、子育て・家庭・学校・職場での悩み、高血圧や糖尿病などの治療、急な腹痛、肌荒れ、排尿の悩み、月経・生理の相談、メンタル不調、介護の相談…など、家族単位で診ていく、家族のかかりつけ医になれるのが家庭医です。
日本では大変珍しい家庭医ですが、実は海外では一般的な仕組みです。
例えば、イギリスのNHS(National Health Service)という医療制度では、住んでいる地域ごとに、住民が受診する家庭医(ファミリードクター)が指定されており何か不調があった時どんな症状であっても、まずは担当の家庭医に相談しに行くルールになっています。
イタリアでは、病気や怪我をした場合、まずは、自分の登録したかかりつけ医に診てもらいます。 そこで、さらに治療や診察が必要となった場合は、処方箋や紹介状を書いてもらって、専門医を受診することになります。
生まれてからずっと同じ医師に相談し続けることも珍しくなく、自分のことをよく知ってもらった上で診察してもらうことができます。
家庭医もトレーニングを積んだ専門医です
医師の多くは、循環器内科、消化器内科、心臓外科などそれぞれに専門医の資格を持っています。家庭医も幅広く診療が行えるようなトレーニングや診療経験を積んだ上で、専門医試験に合格して得られる専門医の一つです。
家庭医とは、地域住民の健康のために働く総合診療医のことです。
地域を「まるごと診る」ためには、特定の年齢・臓器・疾患などを診ていく一般的な専門医とは異なるアプローチが求められます。
具体的には、地域全体を対象として、日常よく遭遇する健康問題に対して、年齢や疾患を問わず、予防医療、多疾患併存(multimorbidity)や、身体に害を生じる多剤内服問題(polypharmacy)、心理社会的問題などを含めて、家族との関係性も重視しつつ、包括的に対応できる能力が必要になります。
また、地域全体を診るという視点からは、地域の医療・介護・福祉などのリソースと連携して、最適なサービスを提供していく能力も重要で、それらを訓練された専門医が家庭医です。
家庭医は「あなた」の専門医
家庭医の中には「先生の専門は何ですか?」と聞かれた際に「あなたの専門医ですよ」と答える方もいます。
従来の専門医は、専門の臓器や疾患を決め、その分野に対するとても深い知識を持っています。大きな病院では、それぞれの専門外来でその臓器、その疾患に特化した専門医から治療を受ける事が出来ます。また、大学病院では、最先端の治療法や難病についての研究が行われており、一つでも多くの命を救うために研究が日々行われています。
細分化されそれぞれのスペシャリストの診察を受ける事ができる日本は医療が進んでいると言えますが、一方でこんな経験をしたことはないでしょうか。
心配事や不調があるけどかかりつけの専門ではないので相談して良いか分からない。
どこの科を受診すればよいのか分からない。
体調不良のたびに、その症状を診てもらえるクリニックを探して受診しなければならない
新しいクリニックに訪れるたび、過去の病歴や飲んでいる薬を毎回伝えるのが面倒
何か所も受診しているため薬の量が増えていっている
同じ疾患なのに医師の専門性によって診断方針が違い、どれを信じて良いかわからない
これらを解決できるのが家庭医です。幅広い分野を診ることができる家庭医は、一人ひとりに合わせた診療や予防を専門としています。ただ広く診るだけではなく、高度な水準で多角的な診療が出来るように私たち家庭医は努力を怠りません。
家庭医は一つの症状、例えば腹痛に対して、内科的な視点だけでなくアレルギー・外科的要因・精神的要因・生活習慣など様々な観点を考え診察を行います。子供の頃から通院していれば、過去の病歴、生活背景まで考慮に入れて家庭医は診療をすることが出来ます。
このように家庭医は一人ひとりのことを深く知った上で診療を行います。そのためには多くの会話をして、あなたのことを知ろうとします。目の前の症状には関係なさそうな質問でも、それはあなたを理解する上で必要なことなのです。これは、ただの話し好きな医師というわけではなく、多くの実践と臨床研究によって生み出された方法です。この“患者さん中心”の診療スタイルが家庭医の日常的な診察スタイルです。「人を診る、人生を診る」と言う言い方をすることもあります。
また、家庭医が気にしているのはあなたのことだけではありません。あなたの後ろには家族がいます。
- 頭痛を抱える子供に向き合いながら、その母親の心配や不調もケアする
- 風邪症状で受診した子供を診ながら、子育てで自分の受診が出来ていない母親の喘息についても一緒に治療をする
- 喘息発作で受診した子供の父親に禁煙指導をする
- 中年女性の診察の中で、子供が巣立った後の生活の変化を聞く
- 男性の糖尿病のコントロールが悪くなった原因が仕事の悩みや家族の不和であることを聞き出し、多角的に原因に対してアプローチして血糖値の改善につなげる
といったように、患者さんだけではなく、患者さんを中心に家族や背景へも目を向けていくことも家庭医の仕事です。
また、家族の後ろには地域コミュニティがあります。地域コミュニティに潜んでいる健康課題はないか、家庭医は日々の診察の中でいろいろなことを考えています。
どんな症状・悩みでも、まずは家庭医に相談してみてください
このように家庭医は幅広く、多角的に、患者さんを中心にご家族や地域医療の健康問題などに関しても考えていくような専門医です。
自分の症状がよくある日常的なものなのか、入院が必要な重症なのか、患者さん自身では判断つきにくいことがあります。家庭医は患者さんを適切な医療機関に繋ぐ役割も担っており、症状を聞いた上で、必要であればすぐに他の専門医と連絡をとります。幅広い診療をしているからこそ、俯瞰的に判断することができ、適切な第一歩を選ぶことができるというわけです。
悩みながら遠方の専門医の診察予約を取るよりも、まずは家庭医を訪ねてみてください。